【芸能】 「女ぶってない」から売れた 体張って嫌な思いも 女性芸人の葛藤 ホルスタイン・モリ夫さん(モリマン)
「女ぶってない」から売れた 体張って嫌な思いも 女性芸人の葛藤
高橋由衣
毎日新聞 2023/3/2 16:00(最終更新 3/2 16:00)
日本テレビ系列の人気バラエティー番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」で、男性芸人とリングに上がり、熱々のあんかけをかけ合う女性芸人がいました。体を張った「ギリギリ」の芸風でブレークした女性コンビ「モリマン」のホルスタイン・モリ夫さん(49)です。
いまほどコンプライアンスを求められなかった1990年代後半から2000年代初頭だったからこそ売れたと振り返ります。現在は古里の札幌市にある繁華街ススキノでスナックを経営しています。モリ夫さんに当時の悲喜こもごもを聞きました。【聞き手・高橋由衣、写真・貝塚太一】
「もうやっちゃえ」から始まった
コンビとしてのデビュー(1994年)後、(吉本興業が運営していた)銀座7丁目劇場で女性芸人初の単独ライブをやりたいと思って、でも、ネタが思いつかない。「もうやっちゃえ」と思ってした「下ネタ」がウケちゃった。
「女の下ネタは業界でタブー」という雰囲気は感じていました。でも、実際にやってしまうと「変なヤツがいる」という流れになって、テレビ番組に呼ばれるきっかけになりましたね。
そこから急に忙しくなり、想像もしていなかった日々になりました。休みがほとんどなく、「夜中に家に帰って30分だけ横になって着替えを取ってまた出る」という生活が続きました。
自分がどこにいるのかもわからなくなるときもありました。ロケ車で移動中に仮眠を取っているときに、ロンドンブーツ1号2号が夢に出てきたと思ったら、仕事中だったなんてこともありましたね。
「痛い」とか「熱い」とか、服を脱がされることがあっても、ウケているのならよいと思っていました。「やるしかない」としか考えられない頭になっていました。
それでも、前日の仕事が長引き、寝ずに富士山に登るロケをしたときはキツすぎて「やりたくない」と泣きわめいて、登山中によだれを垂らして2時間くらい寝てしまったこともありました。
私はコンプラに引っかかるような類いのネタを得意にしていて「女がここまでやるのか」という世間の受け止めもあり、売れたのだと思います。
当時、劇場では男性芸人の女性ファンも多く、女性芸人がネタをやっても笑わないという風潮がありました。でも、私の場合は「女ぶってない」からか、お客さんも受け入れてくれました。
けれど、テレビ番組の企画で男性を相手に戦っていたこともあり、「強いキャラ」というイメージからか、イヤな思いをしたこともありました。電車での移動中や居酒屋で飲んでいるとき、インスタントカメラで同意もなく撮影されたり、突然、蹴られたり。どこに行ってもストレスばかりでつらかったです。
カラオケボックスでトイレに行く途中で絡まれたこともありました。料亭のような人目につかない場所で過ごせたらよかったのかもしれませんが、金銭的な余裕はありませんでした。
それでも、振り返れば、あの自由な時代で「よかったな」と思います。最近はコンプラが厳しく、仕事でもプライベートでもちょっとした発言や言動ですぐにSNS(ネット交流サービス)で炎上しますよね。
テレビ番組だけでなく、すべてのコンテンツで芸人はやりにくくなっていると思います。「女」とか「容姿」を武器にしにくくなっているから、男女を問わず、本当の実力をみられるようになっていると思います。
===== 後略 =====
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