【芸能】騒動から3年 考え続けた生きる理由 俳優・東出昌大さん
【Crossing-クロッシング-】
関東地方の山間部。待ち合わせたひなびた駅のロータリーに、泥やへこみが目立つ自家用車で迎えに来てくれた。人目をはばかることなく、ごく自然に。
俳優の東出昌大(ひがしでまさひろ)さん(35)は今、狩猟をしながら山中の一軒家で半自給自足の生活を送っている。
■家族、キャリア…全てを失った
「寄るところがあるんですが、大丈夫ですか」。主演映画のロケ地だった広島の土産を、普段世話になっている地元の人たちに配って回る。お返しにと、新鮮な卵を持たされた。
独り身の山暮らしといっても隠遁(いんとん)の趣はなく、土地の人とのかかわりは深く濃い。ふもとのスーパーで薬味にする長ネギとショウガを買い、山に上がる。自らさばいたシカ肉の刺し身としゃぶしゃぶを振る舞ってくれた。
「文春砲」と呼ばれた週刊文春のスクープの中でも指折りの不倫報道。だれもがうらやんだ有名俳優同士の夫婦関係は破綻し、2年半前に離婚した。家族、キャリア、信用…。全てを失い、負債だけが残った。
「ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。ずっと考えていました。考えてハッとし、また足元が抜けたような喪失感に襲われて」
身から出たさび。反省が足りない。まだ身の程を分かっていない-。交流サイト(SNS)が強烈なアンチの立場から、もう一人の「東出」を造形し、加工する。「耐えたくない、もうしんどいなあって場面も、もちろんありましたね」
それがもう3年。肥大化したネット上の「東出」を今は遠い存在を見るようにただ黙って眺めている。
この場所に来て、「命」に思いを巡らすことが多くなった。一人銃を担ぎ山に入る自分、生息域で草を食(は)む獣。その運命が交錯するまで双方が歩んできた道。
「じゃあ、お風呂行きましょうか」。あるべき自分を考えない。同時に、あるべきものとして見られる俳優でしか生きられない。地元温泉の湯煙の中で、つかの間、沈思黙考する。
■ガスなし6畳の生活 山は青二才の「でっくん」を受け入れた
役者の「顔」とは何だろう。自分であって自分ではない。言葉で繕わず、自然体でいるとは何だろう-。東出さんは関東地方の山で暮らす。駆け出しの頃からのあこがれだった狩猟免許を取得、銃を手に森に分け入り、一人獣(けもの)と相まみえる。俳優の仕事があるときは山を下りる。あの騒動から3年。一人の時間だけはたっぷりとあった。逃げてきたわけでも、開き直ってもいない。静寂に身を浸し、今も考え続けている。
「おーい、これ頼むわ」
明け方、軽トラックで先輩猟師が獲物を持ってやってくる。このあたりは兼業農家が多く、柿やブドウなど農産物の収穫時期と重なると、獲物をさばく時間がない。害獣駆除が目的で、肉を食べない人も多い。
「猟師のおっちゃんたちの間では、東出のところに持っていけば『食うみたいだぞ』って」。自ら解体し、冷凍庫に保存する。
1年ほど前から山間の古い一軒家で暮らす。狩猟の下見でこの地を訪れ、家主の男性と親しくなった。空き家だったため、厚意で住まわせてもらっている。6畳一間が生活スペース。電気こそ通っているが、ガスはない。山から流れる水を引く。炊事場とかまど、食事のスペースは軒先にある。
「でっくん、撮影から戻ってきたの」
土地の人や猟師仲間には「でっくん」と呼ばれている。朝な夕なに訪ねてきては、世話を焼いてくれる。タケノコをゆがくにはどれくらい米ぬかを入れるか、キノコの食べられる、食べられないの見分け方。「東京から来た青二才に教えてやろうと、みんな面白がってくれるんです」
風呂はないので、車でふもとの温泉へ行く。ほとんどが年配の常連客。東出さんを俳優だと知る人は少ない。「あんたにいい人がいる」。見合い話を持ちかけられることもある。
■うらやむ存在から一転
妻が好きなのか、共演者が好きなのか-。「どちらですか」。芸能リポーターの詰問に顔が硬直した。
「申し訳ございませんが…」
明言を避けたことが、さらに批判を呼んだ。令和2年1月の週刊文春。人気絶頂だった東出さんの、過去の共演者との3年にわたる不倫関係をすっぱ抜いた。人気俳優だった妻は当時、育児に追われていた。「人でなし」。広くシェアされたそれまでのイメージを裏切ったとき、世間の怒りはすさまじかった。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/49f566b50acd754410669a25921dc131ca0e1a66