【芸能】朝倉未来「1分間大会」敗戦の“椅子蹴りラウンドガール”を直撃「“人生終わった”と思っていたけど」――2022年トップ10
2022年、日刊SPA!で反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。今年、色々な分野で話題になった人物に注目。有名人から、そうでない人も区別なく選んだ「話題の人」部門の第5位は、こちら!(集計期間は2022年1月~11月まで。初公開日2022年8月4日 記事は取材時の状況)
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◆ラウンドガールが“選手”として「BreakingDown」に出場、惜敗…
総合格闘家でYouTuberの朝倉未来がスペシャルアドバイザーを務める格闘技イベント「BreakingDown(ブレイキングダウン)」。試合時間は1分間の1ラウンド、“街の喧嘩自慢”が数多く出場することで、SNSでも関連ワードが日々トレンド入りを果たす。7月17日に開催された第五回大会では、初の女子枠が設けられた。
出場者を決めるオーディションで繰り広げられる候補者たちの“乱闘”は、もはや見どころのひとつ。そんななか、鬼気迫る表情で「ヤラセか!」とパイプ椅子を蹴っ飛ばし、大きな注目を集めた女性がいる。
ふだんはラウンドガールとしてリングに華を添えるのが役目の青山あいりさん(25歳)。しかし今回はリングで「命をかける」選手として出場したのだ。
壮絶な殴り合いの末、結果は判定で敗れてしまい、人目もはばからず大号泣。そんな姿に胸を打たれた人も多かった。青山さんは「すべてを失う“覚悟”でのぞんでいた」と話すが、現在は心境に大きな変化があったというのだ。そもそも彼女はいったい、何者だったのか。本人を直撃した!
◆“人生終わった”と思っていたけど「終わりじゃなくて始まりだった」
「負けた瞬間は正直、“人生終わった”と思いました」(青山さん、以下同)
青山さんはリングから降りると、ひとりでは歩くこともままならない様子だった。試合直後の公式インタビューでは顔をくしゃくしゃにして泣き崩れてしまう。
あれから10日後、東京都内の待ち合わせ場所に姿を現した彼女。オーディション時と同様に胸元が大きく開いた緑のキャミソール姿だが、その表情は打って変わって、拍子抜けしてしまうほどに晴れやかである。
「試合後はダメージが残っていたので3日間ぐらい家で休んでいたのですが、久しぶりに外出してみたら『椅子を蹴った人ですよね?』って声をかけられました(笑)」
当初は悔しくて仕方がなく、絶望感に襲われた。しかし次第に「負けて良かったのかもしれない」とさえ思えるようになったと話す。
「これですべて失うのだろうなって。その“覚悟”でのぞんでいたのですが、実際は逆でしたね。終わりじゃなくて、ここから始まるんだって。人生3周目ぐらいがスタートするような気持ちです。ネットでは“メンヘラ”みたいに言われたり、ひどく心配されたりしていたのですが、まったくネガティブな感情はありませんね」
彼女は身をもって“人生の転機”を感じている最中なのだが、それほどまでに「本気で挑戦することで得られるもの」が大きかったのだ。
◆今までのすべてを失う“覚悟”で…
昨年まではラウンドガールのほか、レースクイーン、モデル、俳優など、精力的に芸能活動を行っていた。それをセーブして今年は「格闘技をやる」と決意。そして、今回の「BreakingDown」に応募した。
とはいえ、今後の本業に支障が出る可能性もあったはず。
「オーディションの様子がYouTubeで公開され、仕事関係者からも『どういうことですか?』って、説明を求める連絡をいただきました。格闘技をやれば、顔がボコボコになって、傷跡が残るかもしれない。本当は、来年の大きな仕事も決まっていました。それも実際どうなってしまうのかわからない。ただ、それでも……」
大きなリスクを背負ってまで出場を決めたのは、格闘技への「愛」だ。
◆「わたしの姿を見て“自分でも挑戦できる”と思ってもらいたかった」
趣味は格闘技観戦で全国各地に足を運ぶ。昨年11月に開催された「RIZIN.32」を沖縄まで観戦に行った際の出来事だ。客席で応援する青山さんの姿がカメラに抜かれると、Twitter上で「この巨乳美女は誰だ!?」「野生のRIZINガール」と話題に。
青山さんは仕事の合間を縫って、多いときで月5回は観戦するほど根っからの格闘技好きだが、じつは弟がプロ格闘家なのだという。
「今まで彼の努力を間近で見てきました。減量で倒れてしまったり、他人には言えないような陰の苦労があったり。選手たちは、まさに命を削ってリングに立っている。ひとりひとりにストーリーがあって、想いをかけてぶつかりあう。それを目の当たりすると、自分も頑張ろうという励みになるんです」
だからこそ、今度は自らが選手としてリングに立ちたいと思ったのだ。
「自分には才能もなくて、まわりからダメだと言われ続けてきました。そんな人間でも試合に勝って、やったらできるんだって証明したかった。何かに挑戦したくても勇気が出ない、やる前から諦めてしまう人も多いはずですが、わたしの姿を見て、“自分でも挑戦できる”と思ってもらえたら素敵だなって」
◆あらゆる障壁を乗り越えて
かねてより「格闘技をやりたい」という気持ちを抱いていたが、それを実現するにも“覚悟”が必要だった。
「バスケを10年、ほかにも陸上とか駅伝とか、スポーツは続けていました。そのぶん、自分がプロのスポーツ選手としてやれるのか、わかってしまうんです。努力だけではなくて、もちろん才能も関係がある。そこまでの力がないことは理解していました。
また、ラウンドガールやレースクイーンとして活動する以前、もともとは国家資格を取得して病院に勤めていたのですが、病気で倒れてしまい、仕事を辞めざるを得なかったんです。ほかにも過去に怪我が原因で大きな手術を経験していたので」
そんな彼女の格闘技挑戦について、「最初は応援してくれる人もいなかった」と話す青山さん。だが、手を差し伸べてくれる人たちも出てきた。
「ふだんは“狂拳”竹内裕二選手のGORIGYMで練習させていただいて。もともと釣り仲間だったモハちゃん(モハン・ドラゴン選手)がいる士魂村上塾や、啓之輔くん(吉永啓之輔選手)のキングクラフトにも行かせてもらって。あとは、よく公園でひとりでやっていましたね(笑)。吐くほど追い込むことを目標に毎日練習していました」
◆「想像していた以上の影響を与えられた」
キックボクシングルールで行われた試合本番は、序盤から果敢に打ち合ったが、結果は判定で敗れてしまった。しかし青山さんは「BreakingDown」に出場して本当に良かったと何度も口にする。
「試合の直後から『励まされた』『勇気づけられた』『これから自分も挑戦してみようと思います』というメッセージが届いて。最近は『実際に始めました』というものが増えました。内容が、時間の経過とともに“思っている”段階から“行動に移した”段階に変化してきているんです。自分が誰かの人生をポジティブに変えられたんだと実感して、すごいうれしくて。負けてしまったけど、想像していた以上に影響を与えられたんだって」
青山さん自身も「挑戦するのが楽しい」と思えるように。
「負けて悔しいけれど、自分には無理だと思っていたことを、またやるチャンスが生まれたので。格闘技に限らず、ここからは再起してがんばるだけの状況。挑戦すれば、うまくいかなくても、必ず何かを得られる。SNSやYouTubeも苦手だったんですけど、やってみようと思えるようになりました。すべてを捨ててのぞんだからこそ、そこにどんどん新しいものが入ってきている」
実際、彼女のもとには、これまでのラウンドガールの仕事はもちろん、以前では思いもよらないオファーが続々と届いているという。
◆プロ格闘家の弟との夢「大きな舞台で同じリングにあがりたい」
青山さんはラウンドガールの仕事について、次のように語る。
「やっぱり、格闘技に貢献したいと思っていて。自分がラウンドガールをすることで試合を観にきてくれるお客さんが増えれば、興行主にとってもプラスじゃないですか。もしかしたら、わたしを入り口に格闘技そのものに興味を持ってもらえるかもしれない。
あとは、ラウンドガールの仕事をやっているのも、プロ格闘家の弟と『いつか大きな舞台で同じリングにあがりたいね』って話していて。それがわたしにとって、ひとつの目標になっているんです。ただ、それぞれの実力でのし上がったほうがいいと思っているので、お互いに名前は出さないようにしています」
今回の「BreakingDown」出場でラウンドガールとしての目標達成も現実味を帯びてきているだろう。インタビューの最後に改めて今後の活動や展望についてうかがうと、少し考え込んだのちに「むしろ、記者さんにも相談したいぐらいなんですが」と笑いながら言う。
「いまは試合が終わったばかりで……すべて失う覚悟でやっていたので、先のことは本当に何も考えていなかったんです(汗)。パッと浮かんではこないんですが、新しく声をかけていただいた仕事にも挑戦していくなかで、方向性も見えてくるのかなって。みなさま、ぜひ楽しみにしていてください!」
今後は「青山あいり」の姿や名前を目にする機会も増えていくはずだ。勝ち負けを問わず、覚悟をもって「本気で挑戦することで得られるものがある」。それは、確かな事実なのだ。
<取材・文/藤井厚年、撮影/長谷英史>
【藤井厚年】
渋谷系ファッション誌『men’s egg』編集部を経て、フリーランスのライターとしてHIPHOPファッション誌『411』、オラオラ系ファッション誌『THE ONE』などに携わる。その後はWebメディアの制作会社で経験を積み、紙・Webを問わない二刀流の編集記者に。現在は、主に若者文化、社会問題、芸能人などのエンタメ全般を取材する。Twitter:@FujiiAtsutoshi
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