文春「阿部トレードは周平と天秤にかけた」
「あからさまなポジション偏重の補強だったので、早くから立浪監督の頭には内野でトレードがあるようだった。特に京田はその最有力候補とみられていた。実際にその通りになったが、驚いたのは阿部という人選だった」(中日のチーム関係者)
「涌井が欲しいという話は与田(剛)前監督の時代からあった。交換要員には阿部のほか二、三塁で定位置が阿部と重なる高橋(周平内野手=28)の名が挙がっていた。天秤にかけた結果、阿部の放出になった」
なぜ阿部だったのか。
石川復帰を見据え、阿部か高橋のどちらかを残すことに
その謎を解くためにはまず立浪監督が内野陣をどう構想しているかを整理する必要がある。このトレードの人選には、左膝の前十字靱帯の手術で長期離脱中の「将来の主砲」石川昂弥内野手(21)の存在が大きく関与しているからだ。
「石川は1軍復帰が来夏までかかるほどの大けが。しかし、監督は戻ってくれば再び、正三塁手として育てていきたい意向がある。そうなると阿部、高橋が二塁専念となるが、2人は必要ない。石川復帰を見据え、どちらか1人を残すことになった」(同前)
立浪監督の石川への溺愛ぶりは顕著だ。古参のチームスタッフが明かす。
「自分と理論が合わない中村(紀洋)コーチをシーズン途中で2軍降格させたのも、石川の指導に悪影響を与えないようにした措置だった。監督は石川の父親と親密な仲であることが知られている。その影響なのか、確かにドラフト1位の逸材で球団待望の長距離砲だが、違和感を覚えるほどの厚遇」
「確かにドラフト5位の阿部に対し、高橋が1位というのは大きかった。2位の京田とともにドラフトで上位の2選手を放出すれば、ドラフト戦略や育成方針を疑われかねない。球団の体裁を保つために高橋は出せなかったようだが、それだけではない。
ある時期に高橋は『立浪監督の指導方針に全面的に従う』と誓ったようだ。これも阿部放出の決め手になった。阿部は京田とは違い、監督と確執があったわけではないようだが、結局監督は好き嫌いでトレードを決めたように見える。本人(立浪監督)は自分が辞めた後でも勝つチームにすることが使命としているが、こういうトレードは禍根を残すのではないか」
立浪監督はチームの低迷打破のため、このオフに自身の責任で大なたを振るった。その成否は全て来季の成績次第。情実で“人事”を行えば、手痛いしっぺ返しを食らうのは球史が証明しているのだが……。
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