【芸能】小島慶子「日本が誇る『掃除教育』の精神、家事分担にも生かして」
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エッセイスト 小島慶子
タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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カタールで開催中のサッカーW杯。日本が初戦でドイツを破った翌日の英BBCニュースには、試合終了後にスタジアムのゴミを片付ける人たちの写真が載りました。鉢巻きを巻き、青いユニフォームを着たアジア系の男性で、日本チームのファンのようです。記事ではこうした日本のファンたちの振る舞いを称賛し、前回のロシア大会でも見られた姿だと紹介。「掃除は日本人の生き方の矜持を示す行為。スタジアムの後片付けは、小学校での教室掃除など、基礎的な振る舞い方の教育の延長上にあるものだ」(スコット・ノース大阪大学大学院教授)という専門家のコメントも掲載。コメント欄には「尊敬する」「見習うべき」などの賛辞が多く寄せられています。
確かに、子どもたちが教室を掃除するという習慣は他の国ではあまり馴染みがないでしょう。こうした形で日本の評判がよくなるのは良いことですよね。
そんな世界の模範たる日本人ですが、夫婦の家事育児の分担時間を見ると、世界でも飛び抜けて女性に偏っているのはどういうわけでしょうか。女性の有償労働時間と無償労働時間の合計はOECD加盟国で最も多く、総務省の調査でも6歳未満の子どもを持つ夫婦では女性の方が男性よりも4時間38分も長く家事をしており、15年前からほぼ変わっていません。男性たちが小学校の頃から身につけた誇り高い行動様式は、家庭内では発揮されていないようなのです。実に不可解ですね。
家事は、人目に触れない場所で繰り返される終わりのない営みです。総務省の調査では、2016年以降は男性の30%以上が家事をするようになっているという変化も表れています。家事育児が「当たり前の習慣」として全ての人に根付きますように。そうなった時に本当に世界に誇れる「お掃除教育」の成果と言えるのではないでしょうか。
◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。
※AERA 2022年12月5日号
https://news.yahoo.co.jp/articles/c28f8f3acceeef01236525539d3af77ac4269e69